青池作品に出会うまで
私はマンガで育ってきた世代、小学生の頃の基本は本屋で立ち読み。少ない小遣いの中からどのマンガを買うのか。書店で単行本を1時間とか立ち読みして、その中で気に入ったのを購入。もちろん好きな作家のはすぐに買うけど、そうでない場合は立ち読みで確認してからってのが定番。マンガ雑誌も表紙をながめて、パラパラ程度は目を通す。
私が青池さんのマンガを認知したのは、そんな小学生の時だったと思う。
月刊プリンセス「イブの息子たち」の新連載、巻頭カラーだったと思う、タイトルの面白さに惹かれて読んだ。
もぉ面白いの、面白いの、立ち読みだから大笑いを堪えるのに必死。コミカルな表現と歴史のパロディー、個性的すぎるキャラクターに大ウケ。
よし、これは次号も立ち読みするぞ! そう、小学生にブ厚い月刊プリンセスは、なかなかの出費。他に「別冊少女フレンド」「別冊少女マーガレット」を可能なら買っていた頃。小遣いは単行本に回したい。
申し訳ない、正統派の少女マンガはほぼ記憶に残らなかった。「イブ」は、ある意味イロモノ。あの時代にゲイを主人公側に起用して、それをネタに話を作っているんだから。
かと言って私は正統派が嫌いなわけじゃない。小学生から高校生までは里中満智子先生にどっぷり浸かってる。
ただ青池さんは「イブ」以降がいいと思ってる。逆にそれまでの青池ファンは「イブ」を境に去った人もいるようだ。
ティリアンに出会う
高校生になり、書店で「エル・アルコン -鷹-」全2巻を見つけた時も、中も見ずに購入。
ワクワクしながらページをめくると・・・美形の長い黒髪のティリアン・パーシモンが見つめていた。どシリアスの歴史物だ!
しかも主人公はダークヒーロー。16世紀、エリザベス1世の治世。スペインのスパイ、イギリス海軍将校。きたるべき開戦に備えて、よりイギリス海軍での地位を高くし、反旗を翻すために様々な策謀を計る。
利用するために海軍提督の娘を籠絡、邪魔な将校や市民に無実の罪を着せる等々。処刑を前に無実の男は思う「(君のやり方は)まさに芸術だよ」。うーむ、こう書くと極悪人だな。
私もティリアンに殺されたかった! 口づけされながら殺されたかったよ! と、高校生なら思わずにいられない。
本編はわずか連載5回、それに続編「テンペスト」が前後編で、単行本化にはたっぷりと加筆されても全2巻。なれど、その衝撃は凄まじく、ある意味「よくこの話を少女マンガでやれたなー」と思わずにいられない。
掲載誌は「月刊セブンティーン」(集英社)、純粋なマンガ雑誌では無く、ファッションや芸能記事も多く、誌名どおり読者層はハイティーンの少女。マンガとしてはマイナーな場所だから可能だったのか。(後に「ぱふ」のインタビューで青池さんも同様の事を言ってた)
そもそも先に同誌に「七つの海七つの空」の連載があり、こちらは正統派ヒーローの、悲劇の過去持つ美形海賊が主役で、その敵役としてティリアンが配される。絵柄はまだまだ少女マンガーって感じだけど。
ただ作家自身が主役をほったらかして悪役に惚れ込み活躍させ、主役を食いまくり、最期を迎えた。その前日譚としての「エル・アルコン」が生まれたそうな。絵柄もリアリティを求めるように変化していく。
「エル・アルコン」の連載、月刊セブンティーン(集英社)じゃ気づかんわ。プリンセスコミックで出版されてるから、秋田書店が版権を買い取ったんだろう。青池さん、月刊プリンセスで「エロイカより愛をこめて」でちょこっと出したハズの、ティリアンに似せた子孫のエーベルバッハ少佐が大いにウケ、主役を食らうがごとく大ヒットしてる時だし。主役のグローリア伯爵は「七つの海」の主役、レッドの子孫という設定。
なお後年「アル・カサル -王城-」の主役カスティリア(現スペイン)王ドン・ペドロも黒髪サド目の美男で、ティリアンのご先祖という裏設定。まあファンなら知ってるけど。
愛した男に引き摺られた青池さん、好きだ。
さて小学〜高校まで、私は図書室の司書の先生に顔が効いた。マンガが好きだったが、同じように本も好きだったので。年中本を借りている生徒ならば、司書も好意を持ってくれる。読みたい新刊をリクエストすれば、たいてい購入リストに入れてくれた。
そして図書室の本は保護のために、表紙を透明のブックコートフィルムで包んである。私はこれが欲しかった。司書の先生に頼んで個人的に購入させてもらった事もある。今は通販でも購入可能だが、当時、一般には流通していなかった。
大切な「エル・アルコン」は、もちろんそのフィルムを貼っている。だが逆に、今は経年でフィルムシールの端に変色した接着剤が見えるのが残念ではある。
マンガ評論誌「ぱふ」やサブカルチャー誌「OUT」は、特集が気に入れば購入してた頃。
書店で「ぱふ」に特集 青池保子の世界(1980年 5月号)の時は、当然購入。
美しきティリアンのカラーページ(名前のスペル、間違ってるけど)もさる事ながら、専門誌だからインタビューの内容が面白い。インタビュアーは作品について質問を投げかけ、マニアックな会話が続く。
唐突に「チェーザレ・ボルジア」「塩野七生」 「ルネサンスの女たち」というキーワードが出る。
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