「悪の美学」をどう英訳すべき?

2023/06/10

雑記 - 創作関連

 相変わらず、マンガの英語翻訳に悩んでいる。
 ウラシマン、ルードビッヒのモットー「悪の美学」。直訳すれば「Aesthetics of Evil」。
美学は、そもそもは美の哲学であり、美に関する様々な考察である。
 森鴎外はドイツのエドゥアルト・フォン・ハルトマン(Eduard von Hartmann) の『Die Philosophie des Schönen』 1887(直訳:美の哲学)を『審美論』として抄訳し、のちに『審美綱領』1899(国会図書館デジタルコレクション)として、鴎外の本名、森 林太郎名義で岡村西崖と共編した(つまり原著はドイツ語)。審美綱領の目次をざっくりと書き出すと、こんな感じ。

上巻目次
上 美の詮議
 甲 美の現象
  一 美の現象
  二 美の感情
  三 審美上の楽受
 乙 美の階級

 以下、延々と綴られていた。漢字も使用単語も古いので理解しにくいが、美についての哲学が記されているようだ(さすがに全てに目を通す気にはなれなかった)。
この「審美学」が後に「美学」と略されたのが、日本におけるそれだ。



「美学」という単語、実際に日常で口にする事は少ないが、「男の美学」とか「滅びの美学」とか、キャッチーな単語として目にする事はある。それは学問的な意味でなく、「生きざまや信念の元にある美しさ」や「美意識・美的感覚」の意味合いで私たちはイメージする。言葉は生き物、変化する。翻訳されて日本に入ってきた言葉でも、時間によって意味や使われ方が変わってゆく。
 美の学問に、違う意味合いが持たれるようになったのは、所作に美を求める武道が影響しているんだろうか、などと思ったりする。いや私は武道に詳しく無いけどね。

 だが英語のAestheticsには学問的な意味しか無いようだ。日本語で感じるニュアンスとは変わってしまう。とすれば、どう翻訳すればいい?

 すでに4コママンガで1回使用しているのだが、その時から悩んでいる。「Philosophy of Evil(悪の哲学)」あたりが近いのだろうか? とも考えたが、そうすると「美」が意味として沈んでしまう。美しさ、大事よ、これを無視はできない。
 うーん、うーん、どうしよう。と悩んだ結果、ええい!と直訳のまま、使ってしまった。使った後でも、あれで良かったのだろうかと思ってる。

 そしてまた、今描いている内容でその単語を出したい。どうしよう。再び悩み始める。
 そもそも、彼が「悪の美学」を口にするようになったのは、いつからだっけ? と、アニメを初回から視聴。11話で言ってたのは覚えてる。その前からあったっけ?
第9話
 ラスト間際、ミレーヌ「小娘の律儀な祈りが、ルードビッヒの悪の哲学を跳ね返したという事か」
 あれ? 悪の哲学って、言ってたわ。

第11話
ルードビッヒ「私の美学にふさわしい」
「私の悪の美学に泥を塗ったな」
 うん、やっぱり初出は11話だね。

 近いイメージになる言葉を考えてみる。
Beautiful evil 美しき悪事
Beautiful Crime 美しき犯罪
Beautiful Philosophy of Evil 美しき悪の哲学
 うーん。意訳にしちゃってもいいんだろうか。

 インターネットで「美学」の英訳を調べて、その解答が学問の意味しかない、とあったりした。しかしそれは日本語で調べた時。単に英和辞典の内容を書き連ねただけの答えでは、実情から遠い可能性がある。英語学習塾とかの答えは、どれほど正確なのだろうか? 英語ネイティブの人からの意見が知りたいとは思えども、身近には居ないのだ。
 どーすっかなー。やっぱ直訳のままでいくか。

 なお、森 鴎外の漢字表記だが「鷗外」が正式、「鴎外」は簡易字体である。しかし現状、他の漢字にしても簡易字体の方が一般的に使用されている事などから、鴎外の表記とした。
文京区立 森鷗外記念館だって、表記が一定してないくらいだもん。記念館のロゴは鷗外、記事は鴎外って、統一しようよ(笑)
小説の匣

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