美形悪役が好きだ:松本清張「けものみち」

2022/08/10

美形悪役が好きだ - 「けものみち」

 美形悪役、何もマンガやアニメに限定しているわけでは無いので、今回は小説からのTVドラマについて。
 今年は作家 松本清張さんの没後30年だそうで、色々と解説のTV番組等があったりした。今後もありそう。なにせ作品数が多く、映像化も多い。映画の他にTVドラマもよくあるため、私はBDレコーダーに「松本清張」で単語登録し自動録画を設定している程度には、彼の作品が好きだ。

2段組のブ厚い本

 単発ドラマも連続ドラマもあるが、一番印象に残っているのは2006年(そんなに前か!)の連続ドラマ「けものみち」、主演は米倉涼子さん。
 世間的にはこれより前、2004年の同じ主演の「黒革の手帖」の方が人気があるようで、単発の続編も放送されたし、2017年に武井咲さん主演で連続ドラマも制作されている。
(まあ「けもの-」には、エロティックなシーンもあるので一般受けしずらい、というのもあるかもしれない)
「けものみち」も何度かドラマ化されていて、1982年の名取裕子さん主演の作品を本放送かあるいは再放送で見た事がある。これは原作通り、最後に主人公の民子は破滅する。結局は政財界のフィクサー、鬼頭の掌の上だった、という終わり方。

 しかし時代は変わる。2006年ドラマにおいては利用されてお終い、の主人公では無い。これは男尊女卑の日本でも、少しは女性の地位が上がってきた事と関係しているだろう。利用されながらも、自分も相手を利用する、そんなしたたかな女を米倉さんは好演した。

 銀行の架空口座をネタに相手を恐喝して、夜の銀座でのし上がる「黒革の手帖」も面白いのだが、私としては「けものみち」の方が好きだ。「手帖-」の元子は悪事をしていながらも、仕掛ける悪党と自分は違う、みたいな処女的なカマトトさの感じを受ける。
 それに対して「けもの-」の民子は、毒を食らわば皿まで、のようで、どっぷりと悪の中に浸かっている自分を知っている。利用できるものなら男だろうと何だろうと体を張ってでも利用してやろう、という感じ。
 まあ、それぞれの犯した罪の重さの違いも十分に影響しているわけだが。私は民子の方が好みだ。
 そんな2006年版では民子のキャラクターが変わっていると同時に、フィクサーの鬼頭も民子をただの愛人ではなく、その人格を認めているかのような振る舞いがある。
 鬼頭の臨終に近い頃、長年の片腕、弁護士の秦野と共に青春時代の思い出語りをするシーンは、なかなかである。悪人でも善人でも、若さ溢れる青春はあって、それは過ぎてしまったがゆえに煌めいていた、と感じいる。鬼頭役の平幹二朗さん、秦野役の吹越満さん、良かったわー。もちろん私の好みの佐藤浩一さんも良かった。米子役の若村麻由美さんは、ちょっと若すぎるんだが、十分な貫禄と凄みを出している。
 ラストは原作とは違い、民子は生き延びる。どう生きていくのか? やっぱ裏社会かな。

 私は常々、作品は監督よりも脚本だ!と思ってる。どんな名監督だろうと脚本が悪ければ、イマイチになってしまう。2006年版の「けものみち」、いい脚色、脚本だった。
 もちろんエンディングテーマ曲が中島みゆきさんであった事も、私の評価では大きく貢献している。いい! 合いすぎる!

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